「今のところ赤字ではないが、コロナ融資の返済が始まって資金繰りが以前より窮屈になった」「取引先からの支払いサイトが延びて、手元資金が減っている」——こうした変化を感じたとき、多くの経営者は「まだ大丈夫」と様子を見てしまいがちです。しかし経営改善は、業績が明確に悪化してから取り組むより、数字に違和感を覚えた段階で着手した方が選べる手段が多く残っています。今回は、認定経営革新等支援機関(国が認定した中小企業支援の専門家。税理士や中小企業診断士、コンサルティング会社などが登録されています)を活用して経営改善計画を作る際に使える公的な補助の仕組みを整理します。
業績が落ち込む前に「数字」で状況を把握する
経営改善の第一歩は、感覚ではなく数字で自社の状態を確認することです。具体的には、①今後6か月〜1年の資金繰り表(入金と出金の予定を月ごとに並べた表)、②商品・サービスごとの粗利率、③借入金の返済予定表、の3つを並べて見るだけでも、どこにボトルネックがあるかが見えてきます。多くの中小企業では、このうち資金繰り表を作っていない、あるいは過去の実績しか記録しておらず将来の予定が入っていない、というケースが少なくありません。まずは自社にこの3点があるかどうかを確認することから始めてみてください。
早期経営改善計画策定支援事業とは
数字を整理した上で、金融機関に自社の状況と今後の方針を説明する資料が必要になった場合に使えるのが「早期経営改善計画策定支援事業」です。中小企業庁が所管し、各地の中小企業活性化協議会(中小企業の再生・改善を支援する公的機関。中小機構が事務局を務めています)を通じて運用されている制度で、概要は次の通りです(細部は年度や地域により変更される見込みのため、利用前に最寄りの協議会または認定支援機関に確認してください)。
| 項目 | 内容の目安 |
|---|---|
| 対象者 | 資金繰り管理・採算管理など基本的な経営改善に取り組みたい中小企業・小規模事業者 |
| 支援内容 | 認定支援機関が資金繰り表や損益計画を含む簡易な経営改善計画の策定を伴走支援 |
| 費用負担 | 策定費用の3分の2を国が補助(自己負担は3分の1)。上限額は20万円程度の見込み |
| 提出先 | 原則としてメインバンクなど取引金融機関への提出が前提 |
この制度のポイントは、「まだ赤字ではないが、将来に備えて金融機関と情報を共有しておきたい」という段階でも使えることです。計画書を提出しておくことで、金融機関側も早い段階で経営状況を把握でき、追加融資や条件変更の相談がスムーズになる場合があります。
すでに返済が厳しい場合は「経営改善計画策定支援事業」
一方、複数の金融機関からの借入があり、返済条件の見直し(リスケジュール。返済額や返済期間を一時的に緩和してもらうこと)が必要な段階まで進んでいる場合は、より本格的な「経営改善計画策定支援事業」(通称405事業と呼ばれることがあります)が選択肢になります。こちらも認定支援機関が計画策定を支援しますが、複数行との調整を伴うぶん内容は詳細になり、補助の上限額も早期経営改善計画より高く設定されている見込みです。加えて、計画を実行した後の進捗を確認する「モニタリング費用」についても、一定期間(3年程度の見込み)、一部が補助対象になります。どちらの制度が自社に合うかは、資金繰りの逼迫度合いと取引金融機関の数によって変わるため、最初の相談時点で認定支援機関に判断してもらうとよいでしょう。
計画書に必ず入れておきたい3つの数字
制度を使う・使わないにかかわらず、経営改善計画に最低限含めておきたい要素は共通しています。
- 資金繰り予定表:今後6か月〜1年、いつ・いくらの入出金があるかを月次で示したもの。資金がショートする月を事前に把握できます。
- 商品・部門別の粗利率:売上高から仕入・原価を引いた粗利益の割合。どの商品・サービスが利益を生んでいるかを確認します。
- 数値目標と達成時期:「1年後に粗利率を◯%改善する」など、具体的な数字と期限を伴う目標。目標がないと、計画は「作って終わり」になりがちです。
これらは専門家に頼らずとも、経理担当者や顧問税理士と一緒に整理できる部分も多くあります。まずは自社で分かる範囲で数字を並べてみることが、外部の支援を受ける際にも精度の高い相談につながります。
まず何から始めるか
経営改善は「業績が悪化してから慌てて動くもの」ではなく、「違和感を覚えた段階で数字を確認する習慣」に近いものです。次の一歩として、以下のいずれかから始めてみてはいかがでしょうか。
- 直近の試算表を見て、粗利率が前年同期と比べてどう変化しているか確認する
- 今後半年分の資金繰り表を作り、資金が薄くなる月があるかを洗い出す
- 数字に気になる変化があれば、顧問税理士や最寄りの認定支援機関、中小企業活性化協議会に一度相談してみる
どの制度を使うか、あるいは制度を使わずに自社だけで改善を進めるかは、状況によって最適解が異なります。まずは自社の数字を可視化するところから、判断材料を増やしていきましょう。