「設備を購入した年に、その費用を全額経費にしたい」——そう考える経営者は多いでしょう。その願いを実現できる節税制度が「少額減価償却資産の特例」です。2026年4月の税制改正により、この特例の適用上限額が30万円未満から40万円未満へと引き上げられました。さらに適用期限も2029年3月末まで延長されたため、今こそ正しく理解して活用すべきタイミングです。
少額減価償却資産の特例とは?
通常、10万円以上の資産(パソコン・機械・備品など)を購入した場合、法定耐用年数に従って毎年少しずつ経費を計上する「減価償却」が必要です。たとえばパソコン(耐用年数4年)を38万円で購入しても、1年目に経費にできるのは約9万5,000円に過ぎません。残りは翌年以降に少しずつ計上することになります。
「少額減価償却資産の特例」はこの原則の例外です。取得価額が一定額未満の資産であれば、購入した年に全額を一括で経費計上できます。同じ38万円のパソコンを購入しても、特例を使えばその年に38万円を全額経費にできるため、当期の税負担を直接減らすことができます。利用できるのは青色申告(確定申告や法人税申告で青色を選択している)の中小企業・個人事業主のみです。白色申告の事業者は対象外のため、まだ切り替えていない方は早めの検討をお勧めします。
2026年4月改正の4つのポイント
2026年4月1日以後に取得・使用開始した資産から、改正後のルールが適用されます。
| 項目 | 改正前(〜2026年3月) | 改正後(2026年4月〜) |
|---|---|---|
| 適用上限額 | 30万円未満 | 40万円未満 |
| 年間上限合計 | 300万円 | 300万円(変わらず) |
| 適用除外(従業員数) | 500人超の企業 | 400人超の企業 |
| 特例の適用期限 | 2026年3月31日まで | 2029年3月31日まで延長 |
上限の引き上げにより、これまで対象外だった30万円台のパソコン・タブレット・POSレジ・小型機械なども一括経費化の対象に加わりました。中小企業の日常的な設備投資に直接恩恵が及ぶ改正です。
活用できる資産の具体例と節税効果
取得価額が40万円未満であれば、業種を問わず幅広い資産に適用できます。
- 業務用パソコン・ノートPC・タブレット・スマートフォン(業務専用)
- POSレジ・セルフオーダーシステム・券売機
- 小型の製造機械・電動工具・測定器
- 業務用カメラ・映像機器・音響機器
- パッケージ型業務ソフトウェア(会計ソフト・販売管理ソフトなど)
節税効果のシミュレーション:法人税実効税率23%の会社が38万円のパソコンを購入した場合、通常は4年分割での減価償却ですが、特例を使えば購入年に38万円を全額経費計上できます。その年の法人税を約8万7,000円削減できる計算です。年間上限の300万円まで活用すれば、最大約69万円の節税が理論上可能です。
使う前に確認!4つの落とし穴
- 「40万円未満」なので40万円ちょうどは対象外
「未満」での判定のため、ちょうど40万円の資産は適用できません。消費税の処理方式(税込・税抜)によって取得価額が変わることがあるため、購入前に税理士へ確認することをお勧めします。 - 固定資産税(償却資産税)の申告は別途必要
法人税・所得税の計算上は全額経費になりますが、市区町村への固定資産税(償却資産税)の申告は引き続き必要です。毎年1月末の期限を忘れずに申告しましょう。 - 青色申告が必須
白色申告の事業者は適用できません。税務署へ「青色申告承認申請書」を提出することで翌期から青色申告に切り替えられます。適用を希望する方は早めに手続きを。 - 取得日(使用開始日)が判定基準
契約日ではなく、実際に取得して事業に使い始めた日が判定基準です。3月に発注しても4月以降に受け取り・使用開始した場合は、新基準(40万円未満)が適用されます。
まとめ:経営者がいまやるべきこと
2026年4月の改正により、中小企業が日常的に購入する設備の一括経費化できる範囲が大きく広がりました。今期の設備投資計画を見直すうえで、次の3点を実践してください。
- 30〜39万円台の購入予定を洗い出す:納品・使用開始が2026年4月1日以降なら全額経費化が可能です。年末に向けた購入計画を今から組みましょう。
- 年間300万円の上限を意識して購入時期を分散する:上限を超えそうな場合は翌年度へ分けて購入することも有効な選択肢です。
- 顧問税理士に事前確認する:消費税の処理方式や青色申告の状況によって適用条件が変わります。購入前の一声が節税の近道です。
適用期限は2029年3月末まであります。設備投資と節税を組み合わせた経営判断を今から始めることで、キャッシュフローの改善にもつなげましょう。